ゴシップ香港人
先日、ジョーダンを歩いていた時のこと、
別に何か特別な物がある場所でもないところに
人が群がっていた。
ただならぬ物を感じ、人々の視線の先を見つめると、
若い青年が壁際に立ち、手を後ろに隠し、
警察数名とシェパードが取り囲んでいた。
警察が色々質問をしている様子であったが、
青年は俯いたまま、一切口を聞かず。
手を出すように促されても頑なに拒否。
そして、次の瞬間、何かを嗅ぎつけた様子の犬が、
激しく吠え始めた。あんなに大きく吠える犬の声は
久しぶりに聞いたかと思うくらい響き渡っている。
おそらく麻薬とか、そういった類の物を
所持していたのだろうと思われる。
香港人はゴシップ・事件が大好きなので、
その手のことが目の前で起こると、
道の真ん中であろうと、他人の動線を
塞ぐ位置にいようと、急に立ち止まり、
そして、撮影を始める。
先日、香港人と大陸人がMTR内で大喧嘩になった。
成熟した大人であれば、絶対に出しようのない奇声を上げ、
殴り合い…とはいかないが、体当たりの喧嘩になった。
止めに入る人も特にはなく、
大きく暴れたその人たちを、みんな一点集中で見つめ、
すかさず携帯を取り出し、動画撮影を開始する。
あまりに大きく暴れすぎ、少し距離はあったが、
こちらまでやってきて、足を踏まれたワタクシ。
…っていうか最近、足を踏まれ過ぎである。
おそらく、誰かの携帯に、そのふてぶてしい表情が
収められていることであろうと思われる。
面倒見の良い優しい気質を持ち合わせる友人Fは、
この前、頭から血を流し、意識を失い、目の前で倒れた人を
介抱しようとしたところ、特に誰も助けることはなく、
物珍しそうに立ち止まり直視し、抜かりなく携帯を取り出し、
撮影をし、立ち去っていくのだという。
…っていうか、助けろ。
それらの写真や動画はあっという間にSNSにアップされ、
それを見た人々が、感受性のない「いいね」を与えるのである。
…そんなの全然よくない。
また、あまりに振る舞いの悪い者は、
香港版の2ちゃんねるのようなものに祀られ、
利用している路線、制服やら持ち物、降りた場所などから、
身元を暴くなどの嫌がらせも横行している。
しかし、それらの情報提供は、必ずしも正しいものばかりではない。
以前、大陸人と酔っ払った日本人が喧嘩になったと
某香港のローカルニュースが取り上げていたのだが、
その情報源、写真・動画の出処は香港人の野次馬が
撮影した物であった。
その記事を書いた記者も特に裏を取ったり、
詳しく調べたわけではなく、情報提供をした
香港人の話だけを元に記事を書いた模様。
正直、その喧嘩を見かけたワタクシ、
その喧嘩は大陸人と日本人によるものではなく、
明らかに別の国の方であったことを確信しているのである。
おそらく、その動画やら証言を提供した方は、
幾らかの謝礼を受け取ったのであろうと思われるが、
情報提供は正しくお願いしたい物である。
とにかく、何か悪いことをしたらもちろん、
何か浮いていることをしていたり、
目立つことをしているだけではなく、
自分が運悪く誰かのタイプであったり、
自分の持ち物が誰かの欲しいものであったりしても、
堂々と盗撮をされるのである。
…香港の携帯はデフォルトで音を消せるのである。
もう少し彫像権が尊重される街になって欲しいものである…。