言語の壁
香港で一番美味しい、かつ良心的な値段では
ないかと思われるタイ料理レストラン、Sawali Club。
湾仔と金鐘の間のトラム通り沿いのビルの中に
ヒッソリと店を構えており、数名のタイ人によって
切り盛りされている。
名前のせいで、検索サイトで
「サワリークラブ 湾仔」と検索をすると
「オサワリ クラブ 湾仔」などとヒットする。
恐らくこの様に検索をする日本人の出張者や
駐在員の殿方が多いのであろう。
香港人と違い、人懐っこかったり、
おもてなし好きのタイ人気質のある
おばちゃん達であるが、香港の社会に適応するため、
広東語を操り、英会話をこなし、
どこか気難しい雰囲気もある。
香港人の中では、東南アジア人を
少し見下したところがあり、
外国語訛りの広東語を話す人間を
馬鹿にする風潮も少なからずある。
外国人が海外で暮らすと言うのは、
そういうことでもあるのだが、
そういう事に妙にストレスが溜まったり、
自己防衛のために身構えたりするものである。
*それを香港人の友人に話したところ
「ま、東南アジア人に限らず、香港人は
基本的にどこの国の外国人の事も
小馬鹿にする風潮がある」と言われた。
…話は変わり、多少タイ語会話をたしなむワタクシ。
この店に来るときはいつも、若干酔っ払っているので、
陽気にタイ語で話しかけると、おばちゃん達は笑みを浮かべ、
物珍しそうに話しかけに来たり、優しく接してくれたりする。
以前、予約を取ろうと電話をかけた際、
なに人が出るか分からなかったので、
念のため英語で話すと、凄く警戒され、
嫌そうに、面倒くさそうに対応をされ、
電話番号を聞かれたが、名前は聞かれず、
ガチャ切りされた。
後日、従業員が全てタイ人だと悟り、
先日、予約をする際、タイ語で
予約を取ってみたところ、いつもの世話好き、
人懐っこいタイ人気質たっぷりのおばちゃんになった。
ワタクシのタイ語はモロ外国人のソレなので、
おばちゃんも、大人が子供に話しかけるように、
シンプルに、ゆっくり、優しく
「何時に来るの~^^??」
「何人で来るの~^^??」
「電話番号は~^^??」
と、声の笑顔で対応をされた後、
切られるものだと思ったら
「お名前は~^^??」
と聞かれたのであった。
英語の時には無かった対応である。
タイ語・日本語・英語…どれも
口の動かし方が異なる言語で、
長く話していないと、もどかしいと言うか、
歯がゆい感じがしてしまうので、
正直上手く発音は出来なかったのだが、
迷子の子供をあやす様なおばちゃんに、
郷愁を感じたワタクシ。
外国語というのは、ある種、
警戒心などのバリアをつくり、
一方、海外で、同じ言語を話すもの同士は、
突然、親近感を覚えたりするので、不思議なものだな…
…と改めて感じるのであった。
…因みに、広東語と言うのは、
発音やイントネーション、声調が非常に複雑であり、
外国人にとっては習得するのが難しい上、
友達ではない、店員などの香港人に広東語で話しかける際、
発音・イントネーションが違うと微笑みもせず、
迷惑そうな顔をして、容赦なく
「あ''ぁ''~??」
と怪訝な顔をされ、挫けやすい。
*あくまで個人的な見解である。
加えて、英語を話せる香港人も割りと多いので、
いつまで経っても広東語を学ばない
外国人はとても多い。
因みに友人の香港人に正しく無い広東語で話しかけると、
爆笑され、ある種喜ばれる…。
因みにその昔、
「レンチャー(レモンティー)」を
「リンチャー(乳首茶)」
と言い放った際、爆笑された上
「つまりそれはミルクティー?」などと、
抱腹絶倒されたのである。
恐らく、同じ言語を共有できるようになれば、
幾分、この世知辛さが緩和される…
…かもしれない。